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「老獪」とは嬉しいお言葉です。いつも的確な言葉がさらりと出てくるところがさすがあなたです。実生活での僕は真逆で、10年前のような羽振りの良さはもうありません。どこをどう間違えたのかいまだに時間の切り売りのようなことをして生計を立てています。
あのころ当たり前にいつでも行けると思っていた欧州の醸造所めぐりも、今生では叶わないかもしれません。
あの頃の同村者たちはみんなあなたの、水のように清冽な佇まいのファンでしたし、僕もまたそうでした。
僕はただ老いただけですが、あなたはきっと素晴らしく成長なさったのでしょうね。数日前のあの緊急時にもニュースを見ながら僕は、あなたとあなたの研究分野を思い出していました。何をもなし得ず、何者にもなれなかった老人の僕の目にただただあなたは眩しいですよ。
声をかけてくださりありがとうございました。10年の間に自分が失ったものを思って立ちすくみつつも、やはり生きていると楽しいこともあるのだと思えました。
また、どこかでお目にかかれるのを楽しみにしております。