いつもの劇場の、いつもどおりじゃないステージ。
これまで台本どおりに『誰か』を演じてきた。今回はそれがない。
演出家の煽るような『期待』の言葉に、半ば反射で頷いた。
**
私はどんな顔で舞台に立っていただろう。
それは役者の私だったのだろうか。それとも、ただの私だったのだろうか。
「ねぇ、私は貴女の期待に応えられた?」
『演出家』が頷けば、それだけで彼女は満足だろう。
……、友人とはいまだ連絡はつかないが、なにせ人の入れ替わりの激しい世界だ。
いつか、どこかで。また、一緒になにかを演れたらいい――……