[バックルームの机の前に腰掛け、短い休憩時間を得る。
昼餉は殆ど子どもたちに分け与えてしまったから、腹の虫がまるで鳴き止んでくれない。
手遊びのように、引き出しに昨日仕舞い込んだ封筒を見遣る。
「貴方宛てよ。行ってきたら?」
差出人不明のやけに豪華な封筒。
この孤児院では無縁のもののはずだった。
蝋封を開いた中に差し込まれていた劇場のチケット。開演は間近。
手渡されるよりも前から、周囲が融通を効かせて時間を作ってくれていたのを知っている。他に予定がある訳でもないし、感想を是非聞かせてくれとせがまれている以上……行かないという選択肢は実質、なかった。
同じ引き出しから車のキーを持ち出す。]