ー佐田春陽・佐田実家にてー
[百千鳥さんといくらか話は交わしただろうか?
時間が経てば、行き場なく外にわだかまっていた白い影すら、夜闇と共に消えていくようだった。
どこにも行けず、孤独と寂しさに耐えかねて狂い、せめて人と共に在ろうと生死の境を踏み越えた、そんな魂たちが黄泉へと還っていく。
縁のあるなしに関わらず、輪廻に戻ることができるようになったらしい。
在るべきところに戻れるならば、死者ももう、生者を害することはないだろう。
私はそんな様子を見守り、やがて白い影が家の中へとやってくる。春夜だ。]
おかえり。
[春夜は声を出すことなく、ただ揺らいだ。
こんなになるまでどこに行っていたのかと思ったけれど、まあ帰ってくるという約束は果たしたのだから、よしとしよう。]
いこう。
[百千鳥さんが私の手を握ってくれるなら、私はその手を取って。朝日に包まれる村の中、黄泉への道を歩いた。**]