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ありがとう。
[女は微笑み、そして歩く。空は白み始めていた。]
君は神社に…戻ると良いだろう。
朝と一緒に還るなら、これが最後の機会になる。
君なら、神社まで戻るのも大事ではないだろう。
[女はそう、言の葉を紡いだ。
待つべきものがくるかは分からないけれど、そこは今の女と然程変わらないだろう。待つだけならできる。]
間に合わなそうなら、私も還る。
雉笛さんも中にいる君も、本当にありがとう。助かったよ。
[女は歩く。間に合っても、間に合わなくても。力をもらったから、まだ歩ける。
女の中の空白はなみによってわずかに埋まり、雉笛によってまた埋まった。
寄り添ってくれる人の思いは、こんなにも力になるのだ。埋められなかった空白を埋めてくれるほど。
人の思いに背中を押されて、女は歩く。無力感は既になく、夜明けと共に、わずかに前向きな気持ちになっていた。*]