―レストラン店内―[そんなはずはない。そんなはずはない。どうして料理の匂いなんてするんだ。半ば憤りながら、乱暴にレストランの扉を開けて店内へ。見覚えのある店内は記憶の中よりも大分寂れてはいたが、確かに思い出のレストランだ。視覚以上に、嗅覚があの時の思い出を蘇らせてくる。無言のまま厨房へと足を踏み入れれば、業務用コンロの上には、一つの大きな鍋が置かれていた。もちろん、火はついていない。しかし、厨房に足を踏み入れたことで、匂いは確かに濃くなっている。]