こっちですよね…?あ、れーー
[トンネルを背にして戻る。簡単な事だ。しかし、霧が濃くて視界がはっきりしない。歩みを進めようとすると、何故か脚が鉛のようだ。重たくて持ち上がらない]
え、なんか、脚がーー
[下をみる。すると何かが纏わりついている。足首に。それが人の手慣なら悲鳴をあげたが、真っ白な靄なのだ。つまりーー霧が、脚に絡み付いて歩行を邪魔している。
まるで生きているみたいに]
雉笛、さんーー僕の、脚に、何かーー
[あり得ないあり得ないあり得ない。男は脂汗をかいて進もうとする。彼女と握るタオルはピンと伸び張りつめただろう]