ー民家付近の道路にてー
[目的地に辿り着いても、私はそうと認識できなかった。
それというのも、やはり、視界を邪魔する濃い霧のせいだ。
病院は過ぎた、体感的に役所の近くであるはずだから、恐らく、この付近が目的地であるはずなのだ。]
百千鳥さん、恐らく、この付近が目的地だと思います。
ただ、ライトをつけてもこの霧では、手分けをして人を探すことはできません。
ですので、呼びかけでの捜索になりますが、患者さんがはっきりと助けを求められないほどに切迫していた場合、私は手を離して治療に当たらなければなりません。
今から呼びかけをします、もし私が手を離して治療に向かったとしても姿を見失わないように、離れないように注意してください。
もっとも、さほど離れていないはずなので、患者さんへの治療が終わって百千鳥さんが側にいなければ、こちらから呼びかけますから、あまり不安にならないでくださいね。
[身勝手とも取れる言い分かもしれないが、患者がもし一刻を争う事態なら、そちらに駆けつけなければいけないというのも、また事実なのだ。
決して遠くへは行かないと、はぐれても声をかけると言い含んで、私は周囲への呼びかけを開始する。]
助けに来ました、誰かいらっしゃいますか?
[声は意外にも、よく響いたようだ。**]