>>165[霧の中の移動は本当に一瞬だった気がしていた。
数十分は歩いたはずだけれど、まるで空間が捻れているような程に。そのことに微かに違和感はあるが、深く気にはしなかった。]
大丈夫です。
…わたし、結構鍛えてるので。
春陽さんこそ、大丈夫ですか?
[本当は地震があってからというもの腰が少し痛んでいた。
痣のようになっていたので何かにぶつけたのかもしれない。
何となくその痛みが広がっている気がするが、春陽さんに気取られないようにニコリと笑っていた。]
そうですね…。約束、か。
[ふとその時、誰か知らない人の声が頭に響いた気がした。誰の声かも分からない。]
(ずっと、待っていた?)
[気のせいかもしれないと耳を疑い、辺りを見渡した。が、春陽さん以外には誰もいなかった。]
…いえ、何でもないです。行きましょうか。**