>>157
[私は良い人ではない。実のところは、いつでも保身を考えているような人間だ。
家族の失踪を受けて、悲しみ、一時真相を調べてみたものの、何も分からずに村が閉鎖されたと聞けば、そのまま今に至るまで平穏な日常に生きようとしていたのだ。
恐らく、強迫観念に悩まされ、日常生活に支障が出るまで悪夢を見なければ、無理をしてまで村に戻ろうとはしなかったに違いない。
そんな私からしてみれば、知りもしない人間の隠された真実を知ろうとしたり、怯えながらも助けに行ったほうが、とそう言える百千鳥さんの方がよほど勇敢で優しい人間だった。
本音を言うならば、行きたくない気持ちもかなりあった。
でも、彼女が助けに行った方がいいと言ったから。>>144
きっと行きたい気持ちがあるのだと思った、でも勇気が出ないんだと。
それなら私が行こうと思った、彼女が待っていてくれるなら、聞こえる声にも胸に渦巻く不安にも惑わされない気がしたから。
でも、ついてくるという彼女を見て、差し出された彼女の手を見て。
私を一人にして待っていたくないという声を聞いて。
私は彼女の手を握った。]
はい、行きましょう。人助けに。
[彼女はやはり、勇敢で優しい人間だ。百千鳥さんがいるなら、私はきっと頑張れる。*]