ー佐田春陽・薄い霧の中にてー>>135[自分の名前を呼ぶ方へ歩いた。]ももちどりさん。[離してしまった手の持ち主だった。私は考える。彼女の手を取って、私は家族のもとへ還れるだろうか。還れない可能性も考えた。彼女の手を取ったら還れないかもしれない。私は迷った。約束の一言を思い出した。彼女との約束か、家族との約束か。もしかしたら、この決断はそのどちらかを守り、反故にするのかもしれなかった。*]