精神科医 佐田春陽

ー山・高台の避難場所にてー
[百千鳥さんと一緒にしばらく歩いて。

本当に、そんなに遠くない距離のはずなのに、霧のせいなのか中々先に進んでいる気はしなかったのだけど。

それでも、荒れた道を二人、お互いに手を繋ぎながら先へと歩いて。

濃い霧に巻かれて中々辿り着かない目的地も、私に語りかけてくる囁くような声も、暖かな手に触れている間には不安として浮かび上がってくることはなく。>>123

そして、取り巻くような濃い霧が途切れて、目的地へとたどり着いたことを知る。

目の前に広がるのは、村の全景。それをやや高台から俯瞰する形となる。
流石に手入れがされていないから草が伸びきっていて、快適な眺めというわけにはいかないのだが。
村を見下ろすことのできる位置に、ここはあった。
山の手側には、少し大きな建物。あれが避難場所だ。]

着きました。お疲れ様です。
草が邪魔で確認しづらいですが、とりあえず大きな火事などは起きていないようですね。

[そう、彼女の方を見た。]