>>114
[怯えたような雰囲気が、多少なりともほどけたと感じられた、そのわずかに後。
何やらおどおどとした返事が帰ってきて、思わず気が緩む。
心なしかわずかに微笑みかけた気さえする。
ああ、安心だ。
記者ならば成人しているだろうに、どこかまだ幼さを感じる彼女は、私に安心感をもたらしてくれる。
控えめに繋がれた手に、ほっと一息をついて。
避難施設は、そんなに遠くない。
このまま順調に歩いていけば、十分程度でつく距離だ。迷子になることも普通はない。
それでもこの状況下で、やはり、繋がれる手というものは。
迷子よりもなお恐ろしい、自分を見失うことを止めてくれるから。
優しく、それでもしっかりと百千鳥さんの手を握って。
避難施設へ続く残りの道を、霧に呑まれぬように、少し早足で歩いていった。*]