窓枠の楡色を日に焼けぬ指でなぞり、
己の進退を脳裏に浮かばせていれば
郵便です、と馴染みの配達員の聲がした
一封の封筒はシンプルではあるが上質な手触りのもの
裏面に書かれた差し出し主には覚えがあった
何度か、作品を下したことがある劇場の
演出家の名がそこにはあった
「ふ、ふ。
――ここ数年。持ち込むこともなかったね。
君は本当に、かわらない。」
あの劇場は、中々に演出も凝っていて。
最後に作品を下したとき、
どう演出されたのかと気になり娘を連れ
劇場へと足を運んだ時には、
その出来栄えに娘も目を輝かせていたものだ。