――― 車いすの少年が彼女を見上げた。不安そうな瞳が、彼女の表情をそのまま返していた。 「大丈夫、大丈夫だからね」 「今日殺したあの羊飼いが 狼で間違いないんだから…」そう言葉を零す。誰かに言い聞かせるように。修道女が少年を見下ろせば。ケープが少年に振り下りて世界が2人だけのものになる。瞳に映るその顔が、涙で揺れていた。