ー佐田春夜・神社にてー
>>16
[雉笛の返答を聞いて、女は一つ息をついてから、身体をそっと社務所の扉から離した。]
…行きたいところがある。
君に花を手向けた、なみという少女は、学校の校庭で目を覚ましたという。
もう、彼女は還った。慰めも、恐らく必要ないだろう。
それでも彼女には、誰も花を手向けていないだろうから。
私は学校に行って、彼女の死を悼みたい。
[そこに彼女はいないけれども。
少女の霊は、雉笛とカナの死を悼んでいったから。
自分のことは顧みなかったようだから。
自分の空白をわずか埋めてくれた少女を悼むために移動したいと、女は雉笛にそう告げた。*]