>>9
そうだな。自分にないものを羨んでも仕方がないと分かってはいるんだが。
自分と他人とは違うと分かってはいても、それを考えてしまう。
人の本性というか、私の悲しいところだよ。
[そう、一言返しつつ。]
確かに望まない形で死んでしまうよりは、自身の意思を貫き通した末の死である方が彼女にとってはよかったと思うが。
君にとってはどうだったのか分からなかったから、つい聞いてしまった。すまないな。
よかったかどうかは置いておいて、君は生きていてほしいと願った人間が死んで、悲しいと思いつつも、その意思を尊重しようと考える人間なんだな。
[女は暫し沈黙して、続けた。]
…相手を信じること。相手の正しいと思った選択を尊重するということ。
それができて初めて、人は対等になれるのかもしれないな。
[自身の思いよりも相手を尊重すること。それには苦しみが伴うのかもしれなかったが。
意思を貫こうと決意した彼女もまた、様々に悩んだ末の決断だったのであろうから。
その決意を否定しないこと、その結果を受け止めることが、自分たちができる唯一のことなのかもしれないとは思った。**]