>>+70
[女は笑った。余裕のないことを見抜かれたのがおかしかった。
自身を死に導いた女。悪意はなく、約束だとしても。
それでも自身を死に導いた直接的な原因に対して、たとえ恨みや憎しみを抱いてなくても助力を申し出るなどと。
女は笑った。虚しい気分だった。
罵られた方が、いっそ気が楽であったろう。]
素直なのはいいことだ。君は何も悪くない。
嘘をつかない、誤魔化しをしないのは大切なことだよ。
私は随分、嘘をついてきたから、約束を破ってきたから。
君のまっすぐさが眩しくて、少し妬んだんだろう、多分、ばつが悪かったとも言える。
自分で約束したくせに、君を死に導いたことを少し後悔したんだ。
今更だ、馬鹿だと思う。色々とな。
[半ばやけも入ったような気持ちでそう告げた。
自分が殺した人間に対して、本当に不実な態度だと思う。
殺したことを後悔しているだなんて告げるくらいなら、最初から殺さなければよかったのに。]