[自分のこと、村のこと。
問われれば何となく思い出せても、はっきりと覚えていることは少なく、誰かに聞かれなくては、それらを忘れていることすら気づかない。
女は悩み、考えた。
人が好きだ。
だが、その意味を理解してもらえるかどうか。
また考えて、少女…なみに、こう返答した。]
一緒にいてくれる人が好きだ。今の君みたいに。
[そして笑いかけ、言葉を続けた。]
カンカン…缶に入った飴が好きなのか。美味しそうだな。
どこに忘れたか思い出せないか?
もし、思い出せたら私が取りに行こう。
[その飴はもうないのかもしれなかったが。
好きなものを思い出せる彼女に、一粒でも与えることができるなら、そうしたかったから。**]