59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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高校生 卯月 奈美
[落ちる――落ちる――
下にはかつて自殺者が出たときに、これ以上自殺者が出ないよう植えられた大きな木が生えていた。
足を、腕を、枝に叩きつけられ、枝を何本も折りながら地面に落ちる]
高校生 卯月 奈美
ゴンッ
[鈍い音が辺りに響き渡る。
枝や地面の土で衝撃が和らいだのだろうか、幸か不幸か、落ちてから少しだけ彼女の意識は残っていた。
手足は泥のように重く動かすことができない]
(お母さん、お父さん、帰れなくて、ごめんね。
お姉ちゃん、見つけてあげられなくて、ごめんね。)
[視界の隅に壊れたMP3プレイヤーが映る。]
(もう、一度だけ、カナさんの歌、聞きたいな)
[動かぬ手を懸命に動かし、MP3プレイヤーへ伸ばす。
その手が、MP3プレイヤーに届くことは、なかった。]**
【独】 高校生 卯月 奈美
どの日に死ぬにしても数え歌で死にたかったから、屋上の怪談はありがたかったな。気分はそして誰もいなくなった。
はっ！もしや、怪異を数え歌にすることで、怪異をミステリーへと変換し謎解きを可能にする固有結界を発動してしまった？
【赤】 神部 宵
──掲示板に落とされた唄
[一の神子様 人払い
二つ神子様 肉を召し
三つ神子様 身を清む
四の神子様 白化粧
・
・
七つ神子様 名を返し
八の神子様 蜂の巣に
九の神子様 霧隠れ
投稿者の名前は記載されていない]
雉笛 湊
［原始的だが、現在の状況を考えればある意味一番効果のありそうな話ではある。］
なら、尚の事体力は回復させないとね。
［少し余裕が出来たのだろうかと、小さく笑い「おやすみ」と告げた］
…さて、と。
［しばらくして寝静まったのを確認すると静かに立ち上がる。
外の気配は変わらない。と言うより先刻よりも出てはいけないと思わされる。
入ってきて感じた中の違和感は変わらない。］
問題は明るくなったところで外のヤツが消えるのかどうかよね。
［入口と反対側、窓の方に音を立てないように近付き、カーテンからそっと外を見る。一面真っ白で何も見えたものではない。その時
『まだ、ダメ』
バッと振り返る、誰もいない、聞こえた声は村に着いた時に聞こえた声、そして夢の中でも聞いた声］
精神科医 佐田春陽
ー佐田実家ー
[歩いて歩いて、そうして辿り着いたのは、私の家。
そうだ、私はここに帰らなくてはいけなかった。
鍵を使って、家の扉を開ける。
中は思いの外綺麗で、外から見たような経年劣化もなかった。
いや、何もかもが10年前の、私がこの村を出ていった日と同じだった。
家族がいた。父が、母が、妹が私を待っていた。
私は帰ってきたのだ。]
ただいま。
[父も母も笑う、妹も笑う。そう、私は帰ってきた。
帰ってきて、家族を還したいと願っている、私も還るから。]
雉笛 湊
［どこか懐かしさすらあるそんな声。
誰の…声だっけ。思い出せない。絶対に知ってるはずなんだけど
そんな事を思いながら眠っているであろう彼女の横に腰を下ろす。］
こんな状況だからなんだかんだ寝れてなかったらと思ったけど、大丈夫そうね。
［目を閉じて横になっているだけでも随分違う、と言う話は聞いた記憶がある。小さくそう呟けば改めてスマホを確認する。
地震の情報は無いし、この辺り一帯に濃霧の警報なんかも出ていない
そんな事があるんだろうか。あるのかもしれない。そんな事を考えながら時間は経っていく］
精神科医 佐田春陽
[全てやってはいけないと、分かっていたことだった。それでも。
私のために用意された椅子に座った。家族は安堵したようだった。
私のために用意された料理を食べた。とても美味しかった。
私のために用意された贈り物を受け取った。中身を見ることはできなかった。
酷く手足が冷たくて、眠たかった。
それでも私は帰ってきた。全てはそうなるべきところに収まった。]
父さん、母さん、春夜。
私はこれから、皆と一緒にいるから。
どうか黄泉へ還ってください。おねがいします。
[死者を現世に呼び戻し、その死を慰め、黄泉路へと還す。
詳しいところは、私は知らない。
それでも私にできるのは、これが精一杯だったから。
本来あるべきだった形を取り戻すことで、未練が晴れるなら。
そして、黄泉路へ還すことができるなら。]
精神科医 佐田春陽
[声が聞こえた、家族の、妹のものだった。
それは今まで感じていたぎこちなさを感じることはなく、とても流暢な、違和感のない声だった。]
精神科医 佐田春陽
勿論、還るよ。
私も、父さんも、母さんも、春陽も。
家族一緒にいるべきだ。
でも、扉は開かれた。境界も薄れた。
還らなければならない人は、他にもいるんだ。
春陽と同じように。
私たち、皆、一緒にいなければ。
危害を加えたいわけではないんだ。
ただあるべき姿に戻りたい、それだけなんだ。
精神科医 佐田春陽
分かるだろう？
分かってくれ。
私たち家族には春陽がいても、それで慰められても。
他の人たちはそうではないんだ。
他の人たちもかえりたいんだ。
かえしてくれる人を、共にかえるべき人をずっと待っていたんだよ。
私は迎えに行く、迎えに行かなければならない。
約束したから。
精神科医 佐田春陽
[手足は冷たいを通り越して、動かなくなっていた。
思考も声が響く内に、しびれるように不明瞭になっていく。
それでも、やめて、そう思う。
死者の慰めのために、生きている人を巻き込むのは。
声は出なかった。瞼が落ちる。もう、視界には何も映らない。]
精神科医 佐田春陽
[古びた民家の中、埃まみれの居間で、椅子に座り、ぐったりと事切れていたはずの女の身体が、ふいに起き上がる。]
慰めのためではないんだよ。全てはあるべきところへ戻るだけなんだ。
[口は重たかった、手足も重い。身体は冷たく、心臓の鼓動は聞こえない。]
きっと分かるよ。
…春陽、お疲れ様、よく帰ってきたね。お疲れ様。
私も約束を果たしたら、すぐに還ろう。
春陽がちゃんと、約束を守ってくれたように。
無駄な犠牲は出さないよ、約束する。
[そうして女は重たい身体を動かし、歩いた。
動くはずのない身体は、そうして村の中へと彷徨い出ていった。**]
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