焼き芋屋 安納ハルカ

　うちのジジイ？　うるせーくらい元気だよ。
　まぁ今は腰やって寝ながら泣いてるだろうけど。
　そーそー、んで、オレが代理やらされてんの。

[実家の火傷するくらい熱けりゃ正義みたいな緑茶も良いが、この店のちゃんと温度を計算して淹れられたお茶は香りが違う。
湯呑みに顔を近づけるとふわっと鼻腔をくすぐって。
自然と、ふぅと息をつきたくなる。
口と中に広がる心地よい苦味は爽やかですらあって、芋の甘味をさらっと流していってくれた。]

　うっわ、食べんの久しぶり。

[ばーさんに差し入れの焼き芋を渡すと、お返しにと持ってきてくれたのがコーンに乗った抹茶&ミルクのソフトクリーム。
お茶屋の店頭の旗にもデカデカと載せられている目玉商品だ。
昔は何かのご褒美といえばこれだったっけ。

表面が溶けてたれる前に、抹茶とミルクが美しく混ざり合った頂点に、がぶりと食いつく。
もちろん噛んだ心地はほとんどない。冷たい。けど、頭にキーンとは来ないくらい。
お茶で熱くなっていた口内でソフトクリームはすぐに溶けて、抹茶のほろ苦く控えめな甘さと、ミルクの優しい甘さがやってくる。
ちゃんと牛乳の味がするのに風味は強すぎず、抹茶とぶつかり合わない。これぞ調和ってやつか。]