59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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九条 叶多
[歌は、音は、声は。
私があなたに、あげられるものだから。
それくらい、祓えないなら。
私はあなたの救いだなんて、名乗れないもの。]
九条 叶多
……これ以上は。
きっと、離れられなくなっちゃいますよ。
[苦笑混じりに。
申し訳なさと、後ろめたさを抱えて。
……ああ、まだそっちの誤解を、解いてなかったような。]
宵闇さん、パン持ってませんか？
ちょっと、必要なんです。
[およそこの状況でするべくもない、何気ないような会話。
必要、って言うのはおかしいかな。
はっきりと別れてしまうまでは、抱き締めたままに。
言葉をかけて。]*
神部 宵
…離れない、って言っても、
……離れるでしょ……
[神の血肉を───だなんて
神を信じない俺はリュックから食料品の中にあるカンパンを取り出し渡しながら、離れていく温度に目を伏せた
世界が、いや視界がぐらぐらと揺れている
「儀式」を止める事は出来ないとは分かっている
きっと彼女の姿を俺は最後まで見届ける事しかできないままだ]*
九条 叶多
……カムパネルラの気持ちが、今なら分かる気がしますね。
[自分の死を見据えて、遺す相手に声をかけるのは。
カンパンを受け取って、お礼を言って。]
結局最後は、ひどい女をしちゃってると思います。
宵闇さんのこの先に、さいわいがあるのか不安はあって。
でも、それは願いたくて。……私が最後に、あなたに言いたい言葉としては。
ありがとうございました、なんです。
[最後、と言ったから。
なるべく綺麗に笑うの。
それで、そのまま離れて良いなら。離れるのに、不安が強くないのなら。……いいな。]*
九条 叶多
……うん。
不条理。
その不条理のなかで、悪あがいてるだけ、だもん。
[弱気になる前に、足を動かさないと。
……ふふ。よかった。
笑って、くれた。]
――いってきます。
[そう。儀式をするべく、宵闇さんから離れた。]*
神部 宵
[俺は確かにあの時彼女を殺めようとしていた
何かの力だと思っていたけれど
自分自身の望みだったのだと気付く
もう二度と
「間違った選択」はしたくなかった
手の中からすり抜ける砂粒のように
掴めないものがあるのなら
この手で閉じ込めてしまえば良かったのだ]
神部 宵
[気づけば学校の鏡の前に立っていた
スマートフォンの音が入らないよう操作をするついでに
一通のメールを送り
手にしたカメラを回し始める]
……聞こえる？宵闇チャンネル、始めるよ
今日は廃校の七不思議、
この鏡の前でとある手順を踏むと望みが叶うとか
ヤバいものを呼び寄せるとか
あとなんだっけ
まあ色んな噂があるわけだけど───
[配信者は塗りつぶされたように真っ黒な鏡には映っていない]
じゃあ、早速実証邨ｶ蟇ｾ縺ｫ縺励↑縺?〒荳九＆縺??
[映像や音声は乱れていく]
神部 宵
で、ここ縺薙?隗貞ｺｦ繧貞髄縺?※て、
御辞儀を3蝗槭☆繧九?ゅ％繧後?豺ｱ螟?譎ゅ↓すると───
[そこで映像はひどく歪んだ。最後に映っているのは配信者を引き込む黒い闇。モニターにはカメラが床に落ちたのか大きな音が入り、ノイズが去ればバッテリーが切れるまで、カメラは天井を映し続けるだけだっただろう]*
神部 宵
早くこっちに来いよ
[バッテリーが切れる間際
男のものとも分からない程
伸びたテープ音声のように古びた
抑揚のない口調が響く
冷えて硬い声音で
置いていかれる事に慣れきった者だけが出せる
諦念そのものの声だった]**
九条 叶多
――はじめよっか。
[場所はここ、神社でいい。
見守ってくれる人には、別れを告げて。
最初が、人払いだから。
始める前に、五分ちょっと。時間を、取った。]
一の神子様 人払い
[神社のなか、私の歌声以外に音は響かない。
呼応するように――それまで晴れていた霧が、集まってきていた。]
九条 叶多
二つ神子様 肉を召し
[これで大丈夫かな、と。思いながら。
宵闇さんから貰ったカンパンを、一つ。食べて。
続ける。]
三つ神子様 身を清む
[頭から被るべきかな？
それだと次に困る、と判断して。
手水舎で、神道に倣って。身を清めて。]
九条 叶多
四の神子様 白化粧
[捨丸さんからの頂きもの。
おしろい……真っ白にするつもりはなくって。
軽くつけたところで、一気に霧の濃くなって。
ああ、そっか。白化粧か、って。
納得をして、次を紡ぐ。]
五つ神子様 衣替え
[これは、もう着替えているから。順を追うのなら、今だったのかもしれないけれど。
……ああ、でも。
きっと、次からは引き返せない。
――そこに。]
九条 叶多
「お前じゃない」「お前じゃない」「神子はどこだ」「関係ない、喰らおう」「この村の人間じゃない」「もう持たない」「あの娘はどこだ」「これでは続かない」「どうでもいい」
九条 叶多
うるさい、なぁ！
自分の寂しさに他の人を引き摺り殺す、そんな奴らが私を――九条叶多を、どうこうしようなんて十年以上早いんだからね！
私が捧げられてあげるんだから――これ以上なんて望まないの！
わかえちゃんは、持っていかせないよ。
ぜったい。
[――声の止む。……怖くなかったかと言えば、嘘になるけれど。
今この瞬間において。
私はこう、振る舞わなければならないから。
そうして、続ける。]
九条 叶多
六つ神子様 露命にて
[きゅっ、と心臓の握られたような。
身体の熱が、一気に奪われたような。そんな気が、して。
急がないと、終えられない、から。……はやく。
名を返す前に、私は掲示板を開いて。一つだけ、投稿をした。]
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