[車窓の月が沈み始める頃、瞼を開く。
断続的な揺れには誰もが慣れてしまった。
重く膂力を失くした腕と寝台から抜け出すと、
椅子の下に忍ばせていた自分の鞄に手を伸ばす。
お泊まりセットの詰まったポーチの下から
A5サイズのクリアファイルを引っ張り出して。
中に挟まった一枚の紙を更に小さく折り畳めば
隣にある鞄の一番下に押し込んだ。
それは何度も消しゴムを掛けた末に
「就職」の欄に丸の付けられた、六月分の進路調査票。
先生にコピーを貰えたので結局出さなかった方。]
( どうせ気付くのは荷解きの後。 )