那鮒祥太郎
父を中二の時に事故で失くして以来、祖母と二人暮らし。
母の思い出は無し。小さい頃に病死した。
そう、聞かされていたのだけれど。
父の死後、仏壇に並ぶ父と祖父の位牌。
『母さんは……?』
高校に進学する際、必要書類だと嘯き、戸籍謄本を取り、両親は離婚していたと知る。
父の嘘に少なからずショックを受けるも、真意を確かめる術も無く、大好きな祖母を困らせるのも怖く、知らないままのフリをし続けることに決めた。
この頃から少し友人とは距離を置き始める。
何を信じられるかわからなくなり、もともと好きだった花の栽培と勉強に没頭し始める。
『正しく』育てれば『正しく』美しい花を咲かせてくれる花に愛着を注ぐようになった。食卓に花を飾ると祖母は喜んでくれた。
大神学園に進学し、個性豊かなクラスメート達と忙しくイベントを過ごすうちに少しずつ、心を開くようになる。