[風待月にそぐわぬ茹だった外気が車窓のすぐ傍まで来ていた。 長い様な、短い様な旅を共にした列車に別れを告げ 少年少女は観光地のターミナル駅を降りる。 はしゃぎ回って手提げ鞄を取り落とす者、 コンコースのスイーツ売りに目を奪われる者。 故郷と異なるイントネーションに耳を澄ませる者、 それらを外側から見据える者。 一方で、その誰にも属さず 遠くを見詰めては物思いに耽る影がひとつあった。 ]