[お母さんが“もっと男らしくしゃんとしな”と言う理由も、
“青春は一度きりだからね”と頻りに繰り返すわけも、
今なら分かるけど。
教訓も、教科書も、
新幹線の当日券の買い方やスーツケースの詰め込み方、
人混みに紛れる方法や履歴書なしで働ける勤め先、
他人を真っ当に愛す手筈は教えてくれなかった。
私に本当に必要なものを与えてはくれなかった。
来るべき収穫の時が、怖い。
私を私たらしめるものが全て消えてしまうのは。]
( 貴方みたいに、
身体ひとつに愛の残り香だけ抱き締めて
飛び降りればよかったの? )