澪標 降谷ジュード

　

　[いつからだろう、
　 鉄工所や市場、鳶職の人達の視線が
　 次第に粘りを帯びて行ったのは。

　 今は未だその時ではない、と彼等は言ったけど
　 私を守る未成年という記号が町人達の狂った習慣を
　 既のところで抑えて居るのだと悟った。

　 同時に、これは繰り返された運命であるということも。

　 彼等は悪意なく自分を見下していると解っている。
　 この街から出たところで幸福にはなれないと思っている。
　“馬鹿だから”。“違う人種だから”。
　 そんな理由で。

　 ────それが本当に心を縛るとは、予想だにしなかったが。]