59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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10人目、 老医師 捨丸 美鈴 がやってきました。
老医師 捨丸 美鈴は、Ｃ国狂人 を希望しました（他の人には見えません）。
老医師 捨丸 美鈴
「あら、やっぱり若い人ばかりなのね」
待ち合わせ場所で彼女は小首を傾げた。
気まぐれでインターネットで調べた過去に住んでた村の名前。十年前に集団行方不明事件が発生し、誰も入れない村。
そこへ訪れるツアーがあるというのだ。
捨丸と申します。そのツアー、私でも参加できますでしょうか。
そんな問い合わせを、管理人へと連絡したのは先日だ。
老医師 捨丸 美鈴
[移動のバスの中は、後方の席で周りの人の話を聞いていた。
どうやらあの村はホラースポットとなっているようである。]
そんな怖い場所だったかしらねぇ。
[ゆるりと首を傾げる。]
老医師 捨丸 美鈴
怖い話、ねぇ……。
[車内の話に耳を澄ませつつ、自己紹介がてら、話し出す。]
私、あの村に３０年ほど前に、２年ほど住んでいたのだけども……えぇ、怪談みたいな話はいくつか聞いたわ。
老医師 捨丸 美鈴
学校にお化けが出るとか……山に迷い込むと霧の化け物に喰われてしまうとか。
あと、病院にはね、色々とあったわよ。
あそこ、村の規模の割には大きな病院で――昔は、とある伝染病の研究施設だった、なんて噂があったのよ。
人体実験めいた研究がおこなわれて、そこの犠牲になった人々が死ねずに……または運よく死ねた人も、恨みを抱えて幽霊になって彷徨っているって。
２年お勤めしたけども、一度も会わなかったけどもね。
老医師 捨丸 美鈴
[村へ到着したのなら、建物はすっかり古びているものの、立地自体は変わっていないのに驚いた。
田舎とはこういうものだ。
変わらないのだ。]
……病院も、そのまま残っているのかしら。
[記憶を頼りに村の中を歩いてみよう。]
老医師 捨丸 美鈴
[病院に向かいながら、死斑と言うそのタイトルを思い出したのは、病院に伝わっていた伝染病関係の怪談だ。
若い看護婦たちは怖がっていたが、その頃自分は大丈夫と笑って済ませた。
もっと聞いておけばよかったかしら、と、少し、思った。]
……あら？
[足を止める。
病院に向かっていたはずなのに、気付けば役所の前に立っている。]
だめね、考え事しながら歩くとこれだから。
老医師 捨丸 美鈴
集団行方不明事件ねぇ……。
正直に話すと、私も訳が分からないの。
村の中には、手紙や電話でやりとりしていた方もいたの。
病院のドクターとか、前日まで電話で話していたのよ。
……個人情報を伏せて、症状のお話とかも、含めてね。
動かせるような状態じゃない患者さんもいたの。
その人も、消えてしまった。
ドクターも消えてしまって。
彼は行方不明になるような人ではなかったわ。ここにいる患者さんを治そうと必死な人だったもの。
当時、詳細を追おうとしても一切情報が入らなかったわ。行こうとしても閉鎖されてる。
国単位で関わってるか……それこそ、神隠しとか、不可思議な事件があったとしても、私は否定しないわ。
……今回、ようやく来れたのだもの。
私、この村で何があったか、興味あるのよ。
知りたいわね。
老医師 捨丸 美鈴
ああ……。
前日に、電話で話した際、ドクターが変な事を言ってたわねぇ。
「患者さんで変な事を言い出す人が増えた」って。
変なものを見た、聞いた人が増えたって。
彼は村の中で薬物でも流行ってるのでは、と心配していたけども。
今思えば、どんなものを見たのか、ちゃんと聞いておけばよかったわね。
……ただ、私の知っている範囲で、消えなくてもいい人、消えようとしていた人じゃないのが消えてるのは、確かよ。
自ら消えたのではないわ、絶対。
老医師 捨丸 美鈴
ムツキさんは役場に興味があるの？
ご一緒しましょうか？
私、おばあちゃんだけども、身体はまだまだ丈夫なのよ。医師って体力勝負の仕事だから。
荷物もほら、冒険用の道具も持ってきてるんだから。
[いざとなれば背負える鞄を見せた。]
老医師 捨丸 美鈴
－役場－
[懐中電灯を取り出し、周囲を照らす。建物内部は流石に薄暗い。]
いやね、やっぱり埃っぽいわ。
[受付カウンターがある。待合用のソファも、書類を記載するためだろうテーブルも残っているが、そのすべてが埃をかぶり、朽ちている。
壁に貼られている、色落ちた秋祭りのお知らせなんてポスター。ソファに置かれたままの新聞紙。唐突に打ち切られた生活感は、確かにここにもあった。]
住民の訴えや村の中で起きた事とか、まとめているものがあれば良いのだけども……。
[カウンターの中を覗き込んだ。]
ムツキさん、あなた、特に見たいようなものあるかしら？
老医師 捨丸 美鈴
…………？
[ふ、と。顔を上げる。奥の、通路の向こうへと視線を向ける。]
今、ドアが閉じる音がしなかった？
気のせいかしら。
ごめんなさい、ちょっと見てきていいかしら？
[ムツキが残りたいようならばここで待つようにと声をかけ、通路の奥を覗きに行く。懐中電灯は彼女に預けよう。]
老医師 捨丸 美鈴
[通路の向こう、ぴったり閉じられたドアを見つける。
ドアに貼られたプレートは、]
放送室？
こんなのあったかしら……。
[ドアノブをひねる。ぎぃ、と、軋みを伴って開く。室内はさらに薄暗い――はずなのに、不思議と内部が見渡せた。
なんせ、室内に収まっている放送機械たちは、いまだ電源を灯らせていたのだから。]
老医師 捨丸 美鈴
……あら……。
[非常電源？ と首を傾げた時、ぷつん、と、なんの前触れもなくすべての電源が消え去る。
しばらく見つめていたが、変化はない。
諦めてドアを閉めた時だった。
背後から、場違いな明るい曲が聞こえた気がした。
振り返っても、もう何も聞こえなかったが。]
老医師 捨丸 美鈴
－役場－
[放送室から聞こえた場違いな明るい音楽。]
……電源、消えていたのに……。
[疑問に思うものの、一度閉じたドアを開く勇気はもうなかった。
しかも耳を澄ませば、遠く、村のいずこからかその音楽が聞こえて来た気がしたのだ。
無意識、ぶるりと身を震わせた。]
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