59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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大学生 生駒秀二
ーー学校の屋上
[一瞬、願いが聞き入れられて死んだのかと思った。しかし頬を生暖かい風が撫でる感触に、まだ生命が続いている事と悟る。
舌打ちをし、辺りを見渡した。霧の中に見えたのは老朽化した柵のようなもの。
びゅう、と突風が過ぎ去る]
何処だ、ここは。
大学生 生駒秀二
[そう言えば、蛍が言っていた。気が付いたら家の前にいたと。
つまり、怪異は人を都合いい場所に運ぶ力があるのだろう。
ゆっくり歩いて柵らしきものに近付く。それはコンクリートの地面に打ち付けられていたが、一部分壊れているようだ。
柵の向こうにはーー何も、ない。
漆黒が広がっている。それは下に下に続いているように見えた。
空間の広がり]
屋上……？
[ハザードマップを思い描く。確か廃校があったはずだ。そこの屋上にいるのだろうか]
大学生 生駒秀二
ーーねえ、聞いてる？君たちは寂しいんでしょう。生者が必要なんでしょう？
僕をあげると言ってるんだよ。
さっさと持っていってくれないか。
[佐田や神部、深瀬が聴いたらどれだけ怒る台詞だろうか。それでも男は続けた]
こんなところに連れて来て、何がしたいんだ。
というかさあ、生者がそんなに必要なら、バスがトンネル通った時に崩落起こせば良くない？
グシャッと潰せば一気に殺せたでしょ。
ーー効率が悪いの、嫌いなんだよね僕。
[周囲には誰もいない。しかし、怪異は、人ならざる者はいるはずだ。
見ている筈だ。
聴いている筈だ。
そこら中に、物陰に潜みながら]
大学生 生駒秀二
散々怖がらせて、勿体振ってさ。
ホラー映画もそうだけど悪趣味じゃない？
ハッキリいうけど、生者をいくらそっちに連れていったって、寂しさなんか埋まらないよ。
当たり前だろ、そこには気持ちがないんだから。
人と人は、互いと認め、尊重し、愛し、育んで漸くーー寂しさを埋められるんだよ。
お前らは縁者を無理やり引っ張ってきてご満悦かもしれないが、蛍さんも雉笛さんも死にたくないんだから、そんなストーカーみたいな行為で埋められるもんなんかあるかよ。
[ブツブツ文句を言う。男の周囲はただ風が吹いている。
元恋人の事を思い出した。なんとなく独りが寂しいから、適当な相手を見繕ったがーーそんなことで寂しさが埋まる筈はなかったのだ。
つまり、男は人を誘い込む怪異を馬鹿にしているが、やっていることは同じだ。
怪異は愚かだ。だが、男も愚かであった]
大学生 生駒秀二
だからさあーー
[男は大きく息を吸う。そして、言葉を吐き出す]
僕が、いてあげる。
君達は一方的に求めてばかりだ。
一方的に求めて一方的に追い詰めて一方的に殺す。
それじゃ、埋まらないから。
僕がーー君達の処へ行くよ。
僕の意思で。
大学生 生駒秀二
[人間の一番の苦痛は、自分の意志が全う出来ないことではないだろうか。
人に在り方を押し付けられることこそ、つまり自由を侵害されることが。
何故ならそれは、人が人として、個として当たり前に持つ権利だから。
本来、生きざまによる価値など意味はない。
人は産まれた時から須く平等で、同じ価値を持ち、自由を得ているのだ。
それを侵害するのは他ならぬ同じ人間である。
男がずっと感じていた理不尽は、怪異たちに自身の生命の在り方を決められることだった。
死ぬのが嫌なんじゃない。
勝手に死ぬことを決められるのが嫌だったのだ。
だから、死んでやる]
返事ぐらいしろよ、冷たいな。
大学生 生駒秀二
[無反応な周囲に肩を竦める。
この屋上フェンスには怪談があるが、亡くなったの女の子で、その後の犠牲者も女子ばかりであるのを男は知らない。
男はスマホを取り出した。オカ板を開いて書き込みをする。名無しで]
【赤】 大学生 生駒秀二
1名無し
通報しますた
2名無し
誰？何処で死ぬの？実況よろ。
3名無し
通報しますた
4名無し
どうせ口だけなんでしょ
5名無し
いいぞもっとやれ
6名無し
ｻｻｸｯﾃﾛ
7名無し
つまんねえよそのネタ
大学生 生駒秀二
……は、……
[村にいるメンバーは板を見る余裕などないのだろう。この書き込みはみんな見知らぬ第三者だ。
その無責任さ、低俗さに呆れ、画面を閉じる。
やっぱり怖いのは人間だ。
いや、怖い訳ではない。
人間とは、希薄だ。
人間関係なんてこんなものだ]
大学生 生駒秀二
[ーー彼だけは、違ったけど。
脳裏に浮かぶ顔を振り払う。
あんなに近くにいても、憧れでしかなかった人。
届く筈がない人。
自分は絶対になれない人。
むしろ遠くにいてくれた方が良かった。知りたくなかった。
自分は決して彼のようになれない、という事実を見せつけられただけだった。
彼は、生きるべきだ。
生きてもっと沢山の素晴らしい配信をすべきなのだ。
みんなを喜ばせることが出来る人なんだ。
そこにこそ、価値がある]
大学生 生駒秀二
僕をあげるから。だから。
……頼む。ショウさんだけは。
[壊れた柵まで行き、一気に飛ぼうとした。そうすればこの身体は地面に叩きつけられる。
奴らに殺されるんじゃない。
好きにはさせたい。
自分の意思で、自由にするのだ。
上手く行けば佐田のように良い霊になり、みんなを護ることも叶うかもしれない。
選択は間違っていない。
自身を無価値と思い込み、どんなに他人が価値を認めてくれても聞き入れようとしなかった男にとっては]
[その時、メールの着信が鳴る。その音には、半歩は踏み出していた男の脚を止める力があった]
>>+3>>+4>>+5>>+7
大学生 生駒秀二
[震える手でメールを開く。何故か二つの予感があった。
彼からのメールであること。
もう１つはーー彼はきっと、生きていないこと。
当たって欲しくない予感はいつも]
『君は自分に価値はないって言っていたけれど
価値なんてものははじめからないんだよ』
知ってるよ、ショウさん。
……知ってる。
でもだから、価値が欲しかった。
大学生 生駒秀二
『それは、誰かの想いや繋がりによって
初めて生まれるものだと、俺は思うんだ』
そうだね。でも僕には上手く出来なかったんだ。
自殺してしまったA君に手を差しのべられなかった。
恋人を理解しなかった。
親孝行もしていない。
大学に友達もいない。
『君が誰かに価値を与えている』
僕なんかが、誰かに？
『俺に意味を与えてくれる一人なんだから』
そうなら、嬉しい、けどーー
大学生 生駒秀二
『俺からの我儘だけど、どうか生きて欲しい』
……なんで。
『どうか最後の俺の弱さを受け取って』
なんでだよ。あなたは弱くない。
いや、違う。弱さを堪えながら精一杯、ギリギリで頑張ってたじゃないか。
いつも他人の事を考えて。
他人を優先して。
ーーあなたはいつも、誰よりも。
大学生 生駒秀二
[ズルズルと崩れ落ちた。男はその場に座り込む。あと半歩で深淵に飲み込まれる寸前で。
涙が溢れた。ポロポロと大粒が男の頬を伝う]
なんで…？なんで僕らはこんな目に？
なんでっ！！
なんでショウさんみたいな愛くるしい人を、お前らは連れていくんだよっ！！
[男の絶叫は空しく響くだけだ。なんの返事も、ない]
大学生 生駒秀二
『何があっても俺を忘れないでいて欲しい
俺も君を忘れないから』
ーー忘れるわけ、ないっ……
忘れられるわけが、ないだろっ！！
あなたみたいな、人をーー
う、うっ……
[ただ嗚咽を漏らす。
きっと彼には逢えない。
もう二度と逢えない。
当たって欲しくない予感はいつも、当たるものだから]**
【赤】 大学生 生駒秀二
送信者：イコマ
捨丸さん、無事だったんですね、良かった。
僕は今学校にいます。
避難所には新恵ちゃんがいます。
宵闇さんは、神社に向かったはずーー
大学生 生駒秀二
ーー学校屋上→？
ショウさん…
[男は立ち上がった。涙でぐじぐじになった顔をパーカーの袖で拭く]
ショウさん…！！
[ただ、逢いたかった。逢って謝りたい。彼が生きていようが死んでいようが、むかわなければならない。男は屋上から階段を降りていった]**
大学生 生駒秀二
>>+29
ショウさん…！ショウさんっ……！
[必死に名を叫ぶ。届かない声、届くわけがない声。それでも我を忘れたように声を枯らして階段を駆けおりた。そこで男が見たものはーー]
あーー…
[カメラ、だ。見間違えるわけがない、
それは彼のーー]
あああああああっ！！
[転がるように階段を下り、カメラを拾い上げる。顔面は蒼白、身体は震え。
ここにカメラがある意味。カメラしか、ない意味。
考えなくたってわかる。彼はーー]
大学生 生駒秀二
い、やだ。
いやだ、いやだ、いやだーーっ！！
[身を真っ二つに裂かれても、こんな声は出ない。
持ち主がいなくなったカメラを抱き締めて男は踞る。
啜り泣きだけが校内に響いた]**
大学生 生駒秀二
>>+32 神部
ショウ、さん…？
[涙はもうとっくに枯れ果てて。ただ心臓を抉られるような哀しみと、腸が引き千切られるような苦しみに男は呻いていた。
が、聴こえたのだ、そこに。
神々しく響く彼の声が]
ショウさん…！
[瞳を輝かせ、顔を上げる。しかしそこにいたのは生きている彼ではない。鏡の中に囚われるような姿。
霊体、と気付くのに遅れる。
彼はSDカードを指し示す。暗かったし、カメラに夢中で男は気が付かなかった。そろそろと手を伸ばして小さなカードを拾い上げる]
大学生 生駒秀二
>>+33
……わかり、ました。アップすればいいんですね。そうしたら僕は、役に立てるんですね？
[しっかりと頷く。しかし彼は鏡から出られないようだ。男は立ち上がり鏡に近付く]
どうしたら出られるの？
一緒に来て欲しい。
[鏡が両手をつき、男は彼を見つめた]
大学生 生駒秀二
>>+51>>+56 神部
[鏡にひたりと当てた両掌には、硝子の冷たさ以上の冷やかを感じた。しかし男は夢中である。その薄い硝子板の向こうに彼がいる。
もう二度と逢うことも、声を聴くことも叶わぬと思った彼が。
ーー向こう側からこちら側に。
彼の大きな掌が男の掌に重なる。
ズ、ズ……
指先が絡まったように感じる。合わせた掌と掌の距離がなくなったように。
そこから流れ込んでくる強い眩しい思念に男は全身を震わせた]
大学生 生駒秀二
[身体を弓なりにしならせて、目をきつく閉じる。
痛みではない、傷みを伴う激しい濁流。巨大な闇に男は犯される。体内に満ちる自分以外の存在、それはーー戦慄いて叫ぶ]
ショウ、さんっ…！！
[恋い焦がれるように、死に急ぐように、無我夢中に、全身全霊でーー男は彼の全てを受け入れた]
はあ、はあっ…
[ズルズルとしゃがみこむ。鏡をなぞるように掌が落ちる。眩暈と混乱の最中、男はなんとか気力で意識を保つ。そしてーー陶酔しきった恍惚の表情で微笑み、声に答える]
……はい。ショウさん、嬉しい。
[男はーー闇を孕んだ]
大学生 生駒秀二
>>+83 神部
──廃校、別棟の鏡の前で(神部さん)
[霧に包まれていた時は、まだ残暑厳しい季節であるのに肌寒く感じた。しかし今は酷く身体が火照り汗をかいている。
気だるさはあるものの、辛さは微塵もない。むしろ言い知れない幸福感に男は満ちていた]
……ん、と。お腹が少し重たい、けど大丈夫。
[男は下腹を抑えた。そこは臍下丹田と呼ばれる場所で、内丹術で気を集めて煉ることにより、霊薬の内丹を作り出すための体内の部位である。勿論男はそんなことは知らない]
大学生 生駒秀二
見える……あなたが見える。
僕はあなたのものです。
もう、僕は何も怖くない。
何でも出来る。
ーーあなたが僕に満ちたから。
[背後から絡み付く彼の姿は、男が正気を持って見据えたら異常に気付いたろう。
しかし今、男は彼に全てを捧げてしまった。身も心も手放した。
極限状態における精神の瓦解は珍しい事ではない。
正気では耐えられないなら、すなわち、狂ってしまう方が]
ショウさん、すぐ脱出してあなたの家に向かいますか？
それとも新恵ちゃんやまだ生きていると思われる捨丸さんを探して合流しますか？
大学生 生駒秀二
>>+84 神部
ーー学校→
『そうすれば、ずっと一緒だよ』
[男は思い出す。オカ板に書かれていたおまじないを。そして実行すべき場所も思い当たる]
『さあ、行こう。皆と帰ろう』
[ああ、ちゃんと彼はみんなのことも忘れていない。心配している。優しい彼はそのまま、男の中にいるのだ。
男は大切そうに下腹を撫でる。そしてカメラとSDカードをショルダーバッグに入れると場を後にした]
大学生 生駒秀二
ーー学校→池
[外に出ると霧が薄らいでいる。カナが命を掛けて行った数え唄の儀式のお陰であると、男は知らない。
ハザードマップを思い出しながら男は池に向かった。
酷く濁り嫌な匂いがする。池と言うよりは沼に近い場所に到達する。
この場所が、男の元彼女が河童のようなものを目撃した場所だと男は知らない]
ショウさん、ショウさん……
ーーショウさん。
[おまじないの記憶をたどり、名前を三回呼ぶ。それからペットボトルの水を口に含む。密室ではないし、辺りに人はいない。
男は衣服を脱いだ。
生まれたままの姿になると、池に足を差し入れる。
冷たい。しかもぬるっとする。
でも我慢しなくては。
大学生 生駒秀二
[ゆっくりと水の中に身を浸していく。腰まで浸かったら水を飲んだ。
三回繰り返すとすっかり身体は冷えきった。タオルで全身を拭いてから衣服を身に付ける。
再びバッグを背負ったら、男は歩き出す。目指すのは避難所だ。合流出来たら脱出しよう。
誰が生きていて、誰が死んだか。
今の男はなんの興味もない。もし今誰かの遺体や幽霊を見ても、何も感じないだろう。
大学生 生駒秀二
男はただ、彼が望むことを叶えたいだけだ。みんなを救うのは、彼の望みだ。
役に立てる。やることがある。
男の足取りは軽い。
闇を内包し気が狂ってしまったことで漸くーー男は心に平穏を得た]**
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