59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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九条 叶多
……もう少し。いますね。
[子供をあやすような。
そんな、優しい声の出し方をして。]
――えっ。
[ぞわり、とする。
今の宵闇さんからすると、ひどく冷静な――冷静に過ぎる。
声が、聴こえた気がして。
宵闇さんが、近づいてくる。
その様子は――うん。大丈夫。]
ありがとうございます。
……恥ずかしいトコ、私も結構見せちゃってますね。
[涙を拭われたのに。そう返して、はにかんで。]*
九条 叶多
……あはは。学校の時とか、宵闇さんすっごいカッコよかったって覚えてるんですけどね？
あ、この人モテる人だな、って。どこかで思ったような……。
[きっとこのやり取りも、ぎりぎりのところで成立してる。
踏みとどまってくれているなら、それは嬉しくて。
――私のせいで、宵闇さんを、“殺めた人”にしたくはないな、なんて。
そんなことを思う傍ら。
宵闇さんを抱き締めて、ぽんぽん、と頭を撫でる。
……ちょっと恥ずかしいかもだけど。]
九条 叶多
……あ、宵闇さん。
宵闇さんが神社に来たのは、偶然ですか？
それとも、目的のあって？
[負荷はかけたくないけれど。
この話なら大丈夫……かなって。
ここに来た理由を、訊ねてみる。]*
九条 叶多
あはは、そうですか？
[……耳は良い。それは、異常の範囲ではなかった筈だけれど。
鐘の音がする。
虫の羽音がする。
――響くのは。
…………少し、怖いな。
驕れ、驕れ、驕れ。
僅かばかりの、残り時間かもしれなくても。
私が貴方を救うんだ。
宵闇さんの耳元に、そっと口を近づけて。]
九条 叶多
[歌は、音は、声は。
私があなたに、あげられるものだから。
それくらい、祓えないなら。
私はあなたの救いだなんて、名乗れないもの。]
九条 叶多
……これ以上は。
きっと、離れられなくなっちゃいますよ。
[苦笑混じりに。
申し訳なさと、後ろめたさを抱えて。
……ああ、まだそっちの誤解を、解いてなかったような。]
宵闇さん、パン持ってませんか？
ちょっと、必要なんです。
[およそこの状況でするべくもない、何気ないような会話。
必要、って言うのはおかしいかな。
はっきりと別れてしまうまでは、抱き締めたままに。
言葉をかけて。]*
九条 叶多
……カムパネルラの気持ちが、今なら分かる気がしますね。
[自分の死を見据えて、遺す相手に声をかけるのは。
カンパンを受け取って、お礼を言って。]
結局最後は、ひどい女をしちゃってると思います。
宵闇さんのこの先に、さいわいがあるのか不安はあって。
でも、それは願いたくて。……私が最後に、あなたに言いたい言葉としては。
ありがとうございました、なんです。
[最後、と言ったから。
なるべく綺麗に笑うの。
それで、そのまま離れて良いなら。離れるのに、不安が強くないのなら。……いいな。]*
九条 叶多
……うん。
不条理。
その不条理のなかで、悪あがいてるだけ、だもん。
[弱気になる前に、足を動かさないと。
……ふふ。よかった。
笑って、くれた。]
――いってきます。
[そう。儀式をするべく、宵闇さんから離れた。]*
九条 叶多
――はじめよっか。
[場所はここ、神社でいい。
見守ってくれる人には、別れを告げて。
最初が、人払いだから。
始める前に、五分ちょっと。時間を、取った。]
一の神子様 人払い
[神社のなか、私の歌声以外に音は響かない。
呼応するように――それまで晴れていた霧が、集まってきていた。]
九条 叶多
二つ神子様 肉を召し
[これで大丈夫かな、と。思いながら。
宵闇さんから貰ったカンパンを、一つ。食べて。
続ける。]
三つ神子様 身を清む
[頭から被るべきかな？
それだと次に困る、と判断して。
手水舎で、神道に倣って。身を清めて。]
九条 叶多
四の神子様 白化粧
[捨丸さんからの頂きもの。
おしろい……真っ白にするつもりはなくって。
軽くつけたところで、一気に霧の濃くなって。
ああ、そっか。白化粧か、って。
納得をして、次を紡ぐ。]
五つ神子様 衣替え
[これは、もう着替えているから。順を追うのなら、今だったのかもしれないけれど。
……ああ、でも。
きっと、次からは引き返せない。
――そこに。]
九条 叶多
「お前じゃない」「お前じゃない」「神子はどこだ」「関係ない、喰らおう」「この村の人間じゃない」「もう持たない」「あの娘はどこだ」「これでは続かない」「どうでもいい」
九条 叶多
うるさい、なぁ！
自分の寂しさに他の人を引き摺り殺す、そんな奴らが私を――九条叶多を、どうこうしようなんて十年以上早いんだからね！
私が捧げられてあげるんだから――これ以上なんて望まないの！
わかえちゃんは、持っていかせないよ。
ぜったい。
[――声の止む。……怖くなかったかと言えば、嘘になるけれど。
今この瞬間において。
私はこう、振る舞わなければならないから。
そうして、続ける。]
九条 叶多
六つ神子様 露命にて
[きゅっ、と心臓の握られたような。
身体の熱が、一気に奪われたような。そんな気が、して。
急がないと、終えられない、から。……はやく。
名を返す前に、私は掲示板を開いて。一つだけ、投稿をした。]
九条 叶多
七つ神子様 名を返し
[わかってた。名を返すってことは。私が、私でなくなるってこと。
輪郭が、曖昧になる。霧のなかの、なんらかになる。
それでも、まだ。
口は動く。
歌は、歌える。]
九条 叶多
九の神子様 霧隠れ
[既に消えかけた、赤に染まった視界が。
真っ白になる。何も、全く見えなくなるほど。
……ありったけ、引きつけられてるのかな？
あれ、何をしてたんだっけ？ 私は、どうして。
何を、頑張っていたんだっけ？ 何のために？
誰の、ためだっけ？
……私が、九条叶多だから。
――そっか。……そうだね。
なら、続けなきゃ。]
【赤】 九条 叶多
ーーオカルトサイトの掲示板ーー
カナ
『カナの歌。私の歌を、ここに。
聴いてくれたら、嬉しいな。』
[そんな書き込みが、音楽ファイルと共に投稿された。]
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