59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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【独】 九条 叶多
「また失敗だ」って、困った笑顔で貴方が言う
朝焼けの丘の上 セロのような声
それでいいって思ってた
一人で歩けなくっていいって
火に焼かれるのなんて簡単で
それはひどく自分勝手だ
ねぇどうしてみんなみんな
ぼくを置いていってしまうんだろう？
きみを失くした強さなんていらない
別れの代わりなんていらないよ
いつだって遺される方が辛くて
強くなった“ふり”をするの
ぼくだってさそりの火になりたい
九条 叶多
[何にしよう。……これかな。
この状況。きっと、求められたその時を思い浮かべるなら。……優しくないなぁ、私。
『ディア・ドクター。』と。タイトルをそっと呟き。
弦を弾く。]
――いつだって遺される方が辛くて
強くなった“ふり”をするの
ぼくだってさそりの火になりたい――
[この曲のモチーフは、『銀河鉄道の夜』から。
一人になることを、強くなることを強いられたジョバンニの歌。
……一番優しい声をしていた人は、物語からも消えてしまった。
そんなひどい押しつけ方の、あってたまるものか、って。]
九条 叶多
――だからこそ。
私はもーちょっと、頑張ってみるよ。
誰かを置いて、遺してしまわないよう。
[そう、誰に宛てるとも分からず口にする。
雉笛さんに訊ねられたら、少し困ってしまいそうだけれど。
……うん。やる気出た。**]
九条 叶多
[貰った拍手と冗談に、はにかんで。
状況纏めを聞いて。やっぱり、と顔に影を落とす。]
……人の悪意だった方が。いっそまだ、なんですけどね。
[それが人によるものなら。
説明のついてしまえるから。
続いての言葉には、俯いて。]
九条 叶多
確かに……他に、ここに来た方では。
この村に縁のある人が、多かったと思います。
[深瀬さんは再訪で、籠宮さんとわかえちゃん、それにムツキさんは……親族縁故なお話を、聞いたっけ。]
そういう意味では。私に縁は、ありません。
……ない筈です。
――ですから。
[分からない、としか言われていないのを。
良いように解釈して。]
私が雉笛さんを、引っ張っちゃうことだってできるかもしれませんよ。元々縁のない私と、繋いじゃうことで。
……私は、そのつもりでいますからね。
[宣言。ただの、意思表明だけれど。
それは目を見て、しっかりと。]
九条 叶多
ふふ。……ええ、しっかり。
既に一度、引っ張って貰っちゃってますからね。
[だからこそ、お返しをしたい気持ちは、あって。]
分かります。……武道、かなりしっかりされてません？ 雉笛さん。
振る舞いが、こう……。
[一緒に歩いていた時とか、特に感じたところだけれど。
身体の軸が、真っ直ぐ一本通っているような。
ちゃんとやってる人の特徴、って聞きかじっていた知識の。
実例を、体験させられたような印象だったから。
そんな安心を、笑顔に乗せて返した。]
九条 叶多
なるほど、柔道。
女性の護身術だと、合気道が一番役に立つのかな？ って思い込みがありますね。
[……ん、なんだか笑顔がぎこちない？
なんでだろう――と。
二度、扉を叩く音。]
……はい。
[すぐに、私を護るような位置取りになっている雉笛さんに感謝をしつつ。
弛緩を緊張に戻して、静かに答えた。]
九条 叶多
…………今の、音。
鍵が閉じて、扉が開いた音じゃ……ありません、よね。
[それなら、ずっと開いていたことになる。そっちの方が怖い。
……ううん。]
鍵……もしかして、家主さんでしょうか？
[冗談のように言ったんだから、笑わなきゃ。……笑えない、な。
それ以外の説明を、つけるとしたら。
今入ってきたろうそれは、何になるのだろう。]
九条 叶多
……どう、しましょうか。
見に、いきますか。
声を、かけますか。
……行くなら、二人がいいと。思います。
[その結果に、何があっても。
一人で行かせてしまうよりは、後悔をしないだろうから。]
九条 叶多
……、…………。
[声を出さずに堪えた。
……ああ、いよいよこうして“目にしちゃった”な。
動きにすら反応するのなら、お手上げだけれど。
雉笛さんと目を合わせて、開いた入口のドアを指差す。
『逃げますか』と。
そう訊ねるように。
――幸い。素振りを見せた私に、黒いそれが襲い掛かってくるなんてことは、なかった。]
九条 叶多
ぇ……。
[漏れた声は、二つの出来事に対して。
……本当だ、閉まってる。
怪異――のせいじゃない。そう、願ってしまったからだって。]
あ……はは……。
[嫌な気配の、消えている。それは分かって。]
何か――いえ。
助かったんでしょう、か。
[何か言ってましたか、なんて。そう訊いてしまって、その答えがあったら。
もう、私と雉笛さんは分かたれてしまうような。そんな気が、して。
止めた。]
九条 叶多
……安全な場所は。ないのかも、しれませんね。
はぐれてしまっていないだけ……幸い、なのかも。
[敵意を感じなかった。
私にそれは、分からなかったけれど……次に訪れる何物かの、同じとも限らなくって。]
場所を、移すべきでしょうか。
[――どこに？
行くアテなんて、まったく……。]
絶対何かがある場所、なら。分かるんですけどね。
[レストランがあの様相なら、隣のお肉屋さんだってそうだろうし。病院は確信めいて。あとはどこかな、なんて。
……安全な場所の目処は。つかない。]
九条 叶多
[頷き。
ここが安全かどうか、は。そうなってしまってから、後悔しても遅い不安は。何を選ぶにしても、あるけれど。
結果的に、危険がないのは確か、で。]
……他のみなさんは。大丈夫かな。
[少し生まれた心の余裕から。
そんな方に、気持ちが向いた。]
九条 叶多
……まだ、届くのかな。
[宵闇さんの現状など知らずに。
掲示板は不安で、今のところは信用のできる。
メールを一通、入れてみる。]
『宵闇さんへ
カナです。……お元気ですか、なんて変な言葉になっちゃいますね。私はそれなりです。
大丈夫、でしょうか。今、どなたと一緒にいますか？
私は、まだ雉笛さんと一緒にいます。
……無事に、届くといいな。』
九条 叶多
全員で集まれたりしたら、すっごく気持ちの楽になるんですけどね。
[全部で何人、いるんだっけ。
ツアー参加者が8人で、私と雉笛さんと、わかえちゃんはツアーじゃなくて。11人かな？
既にそれは叶わないのを。私はまだ、知らないけれど。]
……いったん安全、と信じてみるなら。
雉笛さん、眠っておきますか？
休めるときに、休んでおいた方がいいでしょうし。
[欠伸を抑えた様子を、看過せずに声をかけてしまう。
私が起きていても、頼りないかもしれない。
それでも休んで欲しい気持ちは、あって。]
九条 叶多
ええ。
……おやすみなさい。
[気を張ってくれていたのは。分かってますから。
素直に眠ってくれたのに、安心して。
再び静かになった室内、ふと何の気なしに。
信用できないとは言っても、本当に全てがそうなのかな、と。
掲示板を、見た。]
九条 叶多
――っ！
[スマホを放り投げ――ようとして、留まり。
開いてすぐ、最新で表示されたそれ。
信用できないとか、そんな次元じゃなくって。
……何をどこまで、信じて良いんだろう。
……何をどこまで、疑えばいいんだろう？
ブラウザを閉じて。
スマホの画面を落とした。]
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