59 【ホラーRP村】晩秋の怪
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神部 宵
[情というものが欠けていた
またはそう思っているだけかもしれないが
自身の感情に気付く時にはいつも一人
今この瞬間もこの想いをはっきりとは理解していないのかもしれないけれど。>>321語調が強まる彼の言葉に熱情を感じ、またひとつ心の中で何かが溶ける心地になった]
…うん…頭を撫でて…？
[言葉を紡ぐ彼の気持ちに応えるように俺は言葉の通りの仕草を伝える。手で触れると細い猫っ毛なのだと知った。くしゃくしゃとかき混ぜてから腰を上げて再び君の背に腕を回す
>>322彼もやっぱり人(ではないけど)との繋がりを恐れているのだろう。抱きしめた腕の中、彼の心の猜疑心が伝わって]
大学生 生駒秀二
ーー事件から一年後
ふう、今日も日差しが強い。
[男は今、沖縄にいる。
大学卒業後、男は就職をしなかった。やりたいことがあったから。それはーー]
こんにちは、生駒宵闇チャンネルへようこそ。配信を始めます。
今日は沖縄に伝わる伝統的な怪談についてーー
[神部の機材を受け継いだ男はYouTuberになっていた。内容は勿論ホラーチャンネル。
じわじわ人気を集めている]
大学生 生駒秀二
えっと、この場所はですね、ええとーー
[しまった、話すことを忘れてしまった。が、男の耳元には優しい彼のアドバイスが響く。
男はすぐに気を取り直して配信を続けた]
[男が配信してしまった動画は拡散されたが、それによって世界が大きく変わった訳ではなかった。
結局、男がばらまかなくともそういった悪意は広まり、人間たちは自分の首を絞め続けていた]
大学生 生駒秀二
[男は沖縄の地で、見知らぬ人たちに囲まれながらバイトをし日銭を稼ぎ、たまに配信をするという生活をしていた。
独りではない。彼と一緒に。
正確には三人だ。怨霊も消えた訳ではないから]
[男は彼の影響で随分変わった。人を好きになったし、生きたいと思うようになった。
人の価値は、産まれた時は無だ。しかし、他人との交流から様々な価値が産まれていく。
男はもう自分を無価値とは考えていない]
大学生 生駒秀二
……だって、あなたが教えてくれたからね。僕の価値を。
[日差しの中には出られなくとも、彼はいる。ちゃんと存在しているのだ。
いつだってーー男の傍に。
男は、幸せそうに微笑む。その表情は、頭上に広がる抜けるような青空みたいであったーー]**
神部 宵
──エピローグ──
[単線の寂れた駅舎を出ると線路の向こうにぽつりぽつりと離れて立ち並ぶ昔ながらの家屋が見える
祝日の夕暮れ時とは言え家路へ着く人影は疎らで。タクシー会社の停車場には空車表示のタクシーが一台停まっていた
朧月が東の空から登り始める
沈丁花の残り香だろうか
彼に繋がる感覚を通してふわりと鼻先を擽る]
『旧道経由で○○峠までお願いします。』
『お客さんあんな所にこの時間から？』
[先に乗り込み隣を空けて。運転手との会話は任せて俺は窓の外を見る。山間部に差し掛かるに連れ、窓の外には夕闇が滲みつつあった]*
神部 宵
[村に一番近い道は今は旧道と呼ばれ迂回する新道が主な路線となっていた。今では通る者も少なく、鬱蒼とした木々や落ち葉に埋もれがちだ
一番近い場所でタクシーを降りたと言ってもそれから暫くは侘気な山道を歩く事になる。真っ直ぐに続く旧道を脇道に外れ、さらに細い道を歩く頃にはすっかりと当たりは夜に飲まれていた]
秀、疲れてない？休憩する？
[宵闇に差し掛かり実体を伴えば、肉体的疲れのない俺が手を引いて───とは言え彼は以前とは見違えるほど逞しくなっているので引くというよりただ繋いで歩いているだけかもしれないのだが>>337]
神部 宵
[それでも俺と関わり生きている以上
彼の生命力は減るのだけれど
それ以上に彼自身が前を向く力で今は保っている
こんな夜道をピクニックのようにして歩くなんてかつての俺からは想像もできなかった。辺りや背後に怯えていた日々は今、隣に居る彼のおかげで見る影もない。影なだけに。というか自身も幽霊だった]
神部 宵
あ〜、やっぱり塞がれちゃってるか〜
でもあの端から入れそう
お邪魔します、と
[村へ続くトンネルは数枚の厚いコンクリート板で覆われている。肝試しに訪れる人々の落書きが色鮮やかに風景とのミスマッチを引き起こしていて幽霊なんかより余程怖かった
ぴちょん、ぴちょん、と雫を垂らす
湿ったトンネルを二人で抜けて行く]*
神部 宵
──星捨村──
[トンネルを抜け歩けば月明かりに照らされてかつての風景が広がっている。霧は須くあの夜明けに怨讐を攫って行った。惨劇の、因習の残り香は無く、今は雑霊や動物霊の成れの果てなどが足元を駆けていた
今日は春の彼岸
村人の霊に出会う事があるならお辞儀をして
今日はカメラも無いので目に映る全ては記憶の中にだけ残るだろう]
付き合ってくれてありがとう、秀
お参り、っていうのも変なんだけどさ
ここに来れば、また会える気がして
[彼が手にした花束をそっと村の入り口に捧げてくれる。>>265>>224最後に二人に会った場所だ]
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