獣使い ビアンカ

―　回想：リベリオとの模擬戦　―


　　なんだってェ？
　　溜まってんのかい、リオ。
　　そんなに遊んで欲しいなら相手してやってもいいけど！？


［どこからどう聞いても煽りにしか聞こえない台詞を聞いたそのとき、ビアンカは迷わず鞭を手にした。>>127

　手加減の下手な相棒は控えさせたまま。
　遊び道具でしかない革の鞭で、しばしリベリオとじゃれ合ったのだった。

　後々のためには相棒にも命令をしてスターハント・ウィップを全力で振るい、ここでリベリオを“事故死”させてしまうのが手っ取り早かったのだが。>>115>>116
　ビアンカはそれを選ばなかった。
　そんな大乱闘になったらまずエアハートが割って入ってくるに違いないし、本気の殺意があると見られたら1対多の戦いになる。

　仲間を手にかけるなら魔王の助力がある場所で。
　そうでなくともせめて、容易に援軍が得られる魔王城の中で。
　そう思っていたから、そのときはただ遊びに興じたのだ。“仲間”のふりをする良い機会でもあった］

獣使い ビアンカ

［けれどその裏にリベリオが込めていた思いに、ビアンカは気付かなかった。>>125
　相棒が彼に黙って撫でられていたのを思えば>>124、彼が自分に対しても優しく接してくれていると気付きそうなものだったのだが。

　悩みそのものは何の解決もしなくても、体を動かせば気は晴れるもの。
　一時の気分転換になったことに、ビアンカは心中で感謝していた。
　だが言葉で礼を伝えることは無かった。

　時折讃えることこそあったが>>117、ビアンカとリベリオは、基本的には反目し合う悪ガキ同士のような態度を取り合っていた。
　それは決戦前夜に至るまで変わらなかったのだ。
　実際の行動に出すか出さないかの違いこそあれど>>128］*

獣使い ビアンカ

―　現在・カウンター　―

［ローズと話しながら、ビアンカは考え込んでいた。
　自分が信じたいものとは何か。>>50

　そして考えているうち、ふと、脳裏に浮かんだ言葉がある。

　『最後まで信じてやれよ。相棒を。そして自分自身を』>>123
　あのときリベリオが言っていた言葉だ。

　（自分を信じるって、どうすればいい？）

　自信家の――少なくともビアンカにはそう見える――リベリオに、問いかけたい気分だった。
　自分が信念としてきたものが揺らいでいるとき、果たして何をどうしたらいいのか。彼だったら何と答えるのだろう］

獣使い ビアンカ

［だが、それよりも今は確かめたいことがあった。
　リベリオが魔王を“悪”と断じるその理由だ。
　『魔にも良い奴だっている』>>123
　そう言える彼の目に、なぜ魔王は悪と映るのか？
　聞けば迷いが断ち切れるかもしれないと思った。

　問うならできればエアハートの前がいい。
　エアハートの意見も知りたかった。
　彼が何を思って魔王を倒す気になっていたのか。
　それも合わせて知りたかったからだ。

　ローズとの話を終えたらもう一度席に戻ろう、とビアンカは決意した。

　そのときにちらりと席を振り返ったら、あっかんべーするリベリオの姿が目に入ってしまい>>128、苦笑が漏れた。
　真剣に考え込んでいたのが馬鹿馬鹿しくなってしまった反面、沈んだ気分がだいぶ紛れた］*

通称勇者 エアハート

―　審判 ―

「裁きを。」

歴史は謳う。あるべき世界へ。

彼の魔王が理想とせし星は、
未だ新たに生まれる必要無し。

「勇断せし者（ゆうしゃ）よ。」

ここは君たちの星である。
決して、星は魔王の理想郷ではない。

通称勇者 エアハート

シークレット・イベント

[大魔王の召喚術は、世界を一変させる程の力を持っている。

カラカラの砂漠は、植物だらけの熱帯雨林に。
一面の海を一面の毒沼に。
>>51 ヒトが住むべき安らかな故郷を魔族の支配下に。

星狩りの力を集めながら、彼が住む本拠地を調べる旅路は、
魔王がどうしてそうしたのだろうという意図を巡る日々でもあった。

ひとつ、言えるのは…。
どの地に訪れても、魔族は容赦なく歯向かってくる。
つまり、一つとして閑散とした場所が無かった事だと思う。

だから聖域に一頭だけいたペガサスはとても異質に思えたんだ。]

通称勇者 エアハート

　ん…、どうしたの？ミケ。

[その日は、大きな火山地帯が一気氷山となってしまい、
原因を探るべく途中の宿に泊まっていた。

皆が寝静まる深夜。
呼んでもないのにふわりと姿を表して。
ペガサス…「ミケ」が僕を外に連れ出したがったことがある。

夜の散歩がしたいのかな…？
そんなふうに誘われるのは初めてだったけど、
僕は眠気眼を擦ってミケの背中に乗った。

厚着はしたけど、上空は地上以上に寒い。
いったいどこに連れ出そうとするんだろう？
何もわからないままだったけれど、引き返したいとは言わなかった。
魔族も人も眠る、とても静かな夜だった。]

通称勇者 エアハート

[氷山のてっぺんが見える。
降り立つ事はせず、真っ暗な宙でミケは移動をやめる。

ここに連れてきたかったの？
僕がそうやって声をかける前に、僕自身が気づいた。
ミケの向こうで、宙に浮き、まるで幽霊のように此方を見ている。

見覚えがあって……そこにいるとは思いもよらなかった"人"が。]

大魔王 ノエル

　…ミシェル…。いつだかに逃げて
　久しく見たかと思えば、よもや『そっち』につくとはな。
　
　エアハート。
　お前はどうしてそうやって俺から家族を奪ってしまうんだ？

　ここはもともと俺たちの星だ。俺は新たな星を喚んだんじゃない。
　あるべき姿に戻そうとしているだけだ。

　妻も息子も、俺たち魔族の命を奪ったのは、
　お前たちじゃないか。なのに、エアハート。
　お前の志は勇断なんかじゃない。ただの横暴だ。

　愛馬を奪い、歪んだ星に立てた旗を掲げて、
　尚も俺の邪魔をしようというのか。難い悪い憎い。

　次に相対する時、その時は必ず葬ってやる。

通称勇者 エアハート

[ミケの事をミシェルと呼びながら、
僕に口を挟ませることもなく、ブツブツと呟き続けて。

僕の事を全ての敵のように睨むアイツを、僕が知らないわけがない。
どうしてここにとか、どうしてこんなことをとか。
何もかも聞く前に、すぐに姿を消してしまった。

ミケはそこにいた『魔王』を見せたかったらしい。
ミケ自身が、とうに魔王軍の手を離れた存在であることを、
教えたかったのだろうか。それとも…。]

通称勇者 エアハート

　……奪ってない、奪ってないよ。
　確かに母さんはももう、どこにもいないけど…。

　僕はずっとここにいるんだよ？
　やっぱり、わからないのかな…ノエル……父、さん。

[大魔王は、大魔王と名乗ってからずっと『あんな調子』だ。

元人間の魔族であると、他に誰が知っているのだろう。

魔族を統治し始めてから、老いる事なくあの姿だから。
知れ渡る機会もないだろうし、ましてや…

人間の姿のまま、息子が生きていることを知らないんだ。
どんなに真実を訴えたって、もうノエルの目は、僕を見ていない。

僕はノエルにとって、
もう『勇者』としてしか、映らない…───]**

空賊 イルムヒルト

― 一騎討ちにて ―

[さてさて。

船の上ならば、様々な指揮をしたり。
或いは、最終的に魔導砲の制御をするのが役目だったが。

接近戦となれば話は別だった。
剣だけでなく。

時には側転しながらの蹴りや。
相手の打撃を交わしながらの回し蹴りと。

トリッキーな動きを織り交ぜつつ。
一発一発は重くはないが。

手数で相手を削っていく。
そんなスタイルであったが。]

空賊 イルムヒルト

……へえ。

獣使いと見たけれど。
その子は使わないとはね。

[手数で圧倒。
と言っても、ビアンカが本来の戦い方はしていないのだから当然だ。

尤も、途中からは魔剣を鞘に納めていたから。
こちらも全力でやりあおうとしたわけではないが。]

なるほど――協力を得るための戦いで、無益な殺生はしない。
やるねえ、流石勇者の仲間！

[相手の意図>>103には気が付かず。
誤解したままで褒め称えて。]

空賊 イルムヒルト

よし、アタシ達が協力してあげようじゃないの！

[足に縋られた時>>101はどうしてくれようかと思ったけれど。
結果として、協力する事にしたのだった。]

「頭……良いんですかい？」

なあに、問題はないさ！

[配下へとそう告げれば。
彼らも頭首の言うことには逆らわない。

船乗りってのはそう言う人種なのだ。]