[薄く目を開けて、ポケットからパスケースを取り出して、一枚の写真が確かにそこにあることを確認する。
この時代の技術ではあり得ないほどに鮮明に写ったその写真は、ここまでの自分の足取りと、本来いた筈の場所を示してくれる、ただ一つの寄る辺。
日課どころではなく、日に何度となく眺めては溜息を吐いていたのに、今は。]
「遠くを見んと、今を見よ。」
[混濁した記憶の向こうに確かに耳に残る力強い声に、何となく眺める気分でもなくなって。
首を振って顔を上げれば、橙に照らされたテーブルの上に、一枚のカードを見つけた。]