俺にとって料理は確かに趣味で、ととのえるための手段だ。伸びた背筋、前を向く目。いってきます、の快活な声。小さな頃から母のその姿は俺の自慢だった。だけど生憎、ここでは全く価値のないものらしい。ざわめきの中でも案外言葉というものは拾えるもので、その刃に気付くことは子供だって容易い。兄も姉も真っすぐな人で、しかしその向きは違かったから。弾き、はじかれ、パチパチと。溢れるものに、すり減っていく。