もうすぐこの世界は崩壊する。誰かの陰謀とかそういうわけではない。見立てによれば‘ほんの事故’だ。エネルギーを吸収しすぎた社会は、膨らんだ風船を針でつついたのと同じように爆発する、ってのは上層部の受け売りだけども。ゆっくり膨らんだ世界に生きる人々はこの危機に誰も気が付いてない。俺たちがやってるのは救いじゃない、ってことは身に沁みてわかってる。
「世界、滅亡してほしい?」
「どうした急に」
「考えてそうな顔してたから」
やっぱり集中なんかしてないじゃないか。いつの間に手を止めていて、周囲は日照りの静けさがひしめく。
「俺は……、俺自身が、滅亡した後の世界のほうがチャンスあると思ってる。誰のことを考えてるわけでもない。」
「そっか。まあそうだよね。私も同じ。」
相方は再び手を動かし始める。石と鋼鉄がぶつかり合い、崩壊して、組み変わっていく。空には入道雲が漂っている。
——1N005Q地区、天気曇り、気圧1008、問題なし、メーデーは継続中。——