「じゃあ、なんで紙があるんだよ」
「彫るための下書き!」
相方は俺が書いた紙の裏に、さらに大きな文字を印刷してきて、石の板の上に置いた。そしてそれ通りになぞってノミで石を削っていく。えぐい神業だ。
「あとこんなに情報はいらないわ。必要最低限でいい。」
「ええー。」
「アルデバラン?宇宙のこととか……、生活に使わないでしょ。」
「北極星とか、星の動きとか農業にかかわりそうじゃん」
「そうね。いや、そうだとしても関係ないことまで書いてあるわよね?ビックバンとか」
ボツになった。しかしもし大爆発で地軸に影響でもしたら星の動きが使えるかもわからなくなる。そもそも本当に生きていけるような状態なんて残るだろうか?
相方を見る。ピンクの豹柄のしっぽがうねうね揺らいでいる。あいつも集中なんてできていない。
「しかし、あれだな。めちゃくちゃ速いな。ゴリラの子孫さまでございますか?」
「は?」
俺の額めがけてノミが飛んできた。首を曲げてかわす。ノミは後ろの壁に刺さる。死ぬ……