その映画はいわゆるラブロマンスだった。恵まれない生い立ちの少年は、ある日若く美しい女と出逢う。海のような、深い紺碧の瞳を持つ女。彼女は少年に身に付けていたアクセサリーを渡し、これで母親への薬を買えというのだ。 片方は落としてしまったの。 少年が返そうとしても、女はそう語るばかりで首を縦には振らない。それからも女はことあるごとに少年の前に現れる。わたし、あなたを知っているのよ。ずっと見ていたの。少年が青年に、男になっても女は現れる。常若の優美な姿のまま、真っすぐな長髪を潮風に揺らしている。