…教えてくれて、ありがと。
忘れたままだったら…
好きになれる努力も、できないから。
[家族と離れて、一人で暮らして、だんだん「自分」を確立していって。メッセージは表示させても読まなくて、一人で考えるようになって。
そうして少しずつ見つめ直す余地ができて、知ったことがある。
その場所にいたときは苦しいとしか思わなかったけれど、本当は自分はナオアキに、「兄さん」と呼ばれるのが好きで。
ナオアキの片割れであることが好きだ、と。
──拒んでいて、離れていたのに、勝手な話でしかないけれど。
自分が紛れもなくナオアキの兄であることを、それこそが自分の真ん中にあったことを、離別の期間が明ける頃には、悟っていた。
だからこその、再会したときの態度だったけれど。
それはきっと、ナオアキの口を塞いだだろう。
…間隙はまさに、そのとき、二人のあいだにあったのだ]