[男は帰路につきながら、富豪の星で回収したある資料を座席で眺めていた。
それは唯一、データや記述ではなく、物体だった。
様々なコレクションのうちのどれかではなく、資料の横に寄せて置かれていたガラクタ類のなかに、木製の小さな棒のようなものをみつけたのだ。
なんとはなしに持って帰ってみたが、
それがなんなのか、男は実のところ知らない。
木製の六角柱で、真ん中に黒いものが芯のように入っている――黒鉛だろうか。
片方は垂直に切りそろえてあるが、
片方はナイフか何かで鋭利に削ってある。
しかし、耐久力を考えると武器にするには少々不安感がありそうだった。
見れば見るほど謎だし、そもそも持ち出して良かったのかも謎。
それと普通に考えたら窃盗なのだが、
まあ怒られもしまいと決めつけていた。]