[男は塩の遺跡に関してある推論を一つ立てることができた。
真四角の枠内に名前を彫り込んだ装飾。
あれは人名をリストアップしたもの――つまり、名簿なのではないか?
わざわざそれを残した理由があるとすれば、その名前を残すことに意味があったのだろう。
例えば莫大な資金を提供したとか、大きな戦果をあげたとか、
とにかく名を残したいと考えさせるような何かをしでかしたんだろう。
あんな馬鹿でかく名前を残させたのだ、作らせたのは巨大な権力者か、ものすごく無茶振りをする横暴な人なのだろう。
それでいて自分の名前はすっかり消えているんだから、
――非常に残念な人だ。
男は自分の勝手な想像で笑みを零した。]