[>>260 食欲をそそる芳香に鳩尾あたりが刺激される。
ポケットからパスケースを取り出し、先ほどのカードの文面をもう一度確認。
お邪魔しまーす、と申し訳程度の声を出して備え付けの洗面台で手を洗うと、意を決して厨房に入った。
(彼のカードには、厨房を自由につかっていい許しの声が記されているらしい)
さっきはプロの身のこなしの方に気を取られていたが、なかなかどうして設備の充実っぷりがすごい。
鍋だフライパンだの種類が多いに留まらず、え、サラマンダーとか走る電車に置くもんなの?
ほとんど専用と化していた学校の広い調理室も及ばない水準の高さに、学生たちの修学旅行に理事長先生どんだけ奮発したんだ……と思わず拝んだ。]
何にすっかなー。
一人で食べんのもあれだし、誰か呼んでくっかー。
[そういや今何時なんだ?とこれまた今更なことに思い至りながら、隣のラウンジへ時計を確認し、誰かいたら声をかけ、すぐに食堂車に戻ってくることだろう]