精神科医 佐田春陽

[全てやってはいけないと、分かっていたことだった。それでも。

私のために用意された椅子に座った。家族は安堵したようだった。
私のために用意された料理を食べた。とても美味しかった。
私のために用意された贈り物を受け取った。中身を見ることはできなかった。

酷く手足が冷たくて、眠たかった。

それでも私は帰ってきた。全てはそうなるべきところに収まった。]

父さん、母さん、春夜。
私はこれから、皆と一緒にいるから。
どうか黄泉へ還ってください。おねがいします。

[死者を現世に呼び戻し、その死を慰め、黄泉路へと還す。
詳しいところは、私は知らない。
それでも私にできるのは、これが精一杯だったから。
本来あるべきだった形を取り戻すことで、未練が晴れるなら。
そして、黄泉路へ還すことができるなら。]