[働き先を失い帰る場所も食べるものもなく
路地裏で丸まって転がっていた時に
両の手首に切り傷ばかりがついた女と出会った
体を売って生きていると
女は欠けた歯を見せて笑った]
───死にたいの、でも死ねないの
[毎夜毎夜女は言っていた
黒い涙の跡を頬に馴染ませ
両手に血の痕を残しながら
迎えが来ないのだと泣き疲れて眠っていた
俺にはどうする事も出来なかった
慰め方も、愛し方も、何もかも
どうすれば良いのかが分からなかった
毎晩泣き腫らした女をベッドに運び
布団をかけて隣で眠る
そんな日々が数年か続いた]