[十一年前の正月。
家には帰らないことを電話で告げても、何の反応も無かった。
奨学金を貰う傍ら、バイトで学費を稼ぐ日々。
家を頼らずに生きていくことが、自分に出来る精一杯の抵抗だった。
十年前の正月。
いつ帰ってくるのかと、親から電話があった。
近所の人から作家デビューしたことを口々に褒められ、鼻が高いと言っていた。
最寄りの映画館でも死斑は上映予定らしい。
僕宛に見合いの写真がいくつも届いていると言われた。
帰る気はないとこちらから告げた。
たった一年
僕自身は何も変わらないのに、周囲の全てが変わってしまった。
両親も、彼女>>0:82も。
――…くだらない。]