[口の中の甘い香りが終わり、口いっぱいに涎がこみ上げてくる。今すぐにでもむさぼり尽きたくなる衝動に駆られそうになる。でも、桃の香りを胸に吸い込めば、少しだけ心を落ち着かせてくれた。] ――…行こう。[湖月の手をしっかりと握りしめ、黄泉路を歩く。奇しくも彼女が通った同じ道。今確かめたならば、彼女の死の様子がわかるのだろう。彼女の隣に、彼女を呼んだ兄の姿はない。様々な憶測が浮かびはするが、どれも些末ごとに思えた。]