[男は表情や仕草の大仰さに反して、一言も話さない。まるで声だけ切り取られたように至って静かだった。話せないのか、話さないのかは定かでない。不便に見えるが、これは聞くに徹するには向いている。そしてどうやら、他人の話を聞くのはお好みのようだ。誰かの話に耳をそばだてては、今日び珍しい万年筆(アナログ)で記録を残すのだった。*]