>>121
ああ、よかった。
[この村で死んだからには、家族にすら悼んでもらえないかもしれない。
だから彼女を送り出した自分が死を悼もうと、女はここに来た。けれども。
彼女は誰からも忘れられたわけではなかった。
ちゃんと彼女の死を悼んで、彼女を想って遺体を覆い、曲を流してくれた人がいたのだ。女はそれを思い、安堵を覚えた。
そして、近くの植え込みへと歩く。
手入れされていないそれは、延び放題だったり荒れていたりしたけれども。
その中に、可愛らしい紫苑の花を見つけて。
女は力を込めて、それを手折り、なみの遺体へと供えた。
きっと、彼女を想ってくれた人と、今の自分の気持ちは同じなのではないだろうか。そう思いながら。]