[やがて自分と同じ制服の色とりどりの高校生達と、教師達の姿とが視界に増え始め、集合場所がそこなのだと察しがついた。
近付くにつれて、賑やかな笑い声や話し声の内容が徐々に聞き取れるようになっていく。
雨の気配を感じさせるひやりとした空気に混じった、制汗剤や整髪料、化粧品、お菓子やコーヒーの匂い。
覚えのある、だが遠い記憶の中に仕舞い込まれていた筈のこの情景は、青春の一ページと呼ぶに相応しいのだろうと、今の自分にはわかる。
まるで追憶の夢のようなのに。]
…おはよう。
[そうやって発した自分の声さえも、あの頃のもので。
それなのに、自分の体の感覚全てが、これが「今」で、現実なのだと伝えてくるのだった。]