彩葉・ギブソン

［やがてゆっくりと寝台特急トワイライト・リライトが減速し始めるのを感じて、ノートを閉じた。］
　
　記憶は、時々取り出さないと薄れてしまうわ。

［久しぶりにパスケースから取り出した大切な写真を見れば、「チンギス・ハーンってこんな顔だった？」と首を傾げた。

　あんなにも興奮した出来事でさえ、目の前の刺激に上書きされるのだから。］

　…だから、人は記録を残すのね。
　自分が見聞きしたものを、未来の誰かに残したいから。

［今の所、まだ最初の数ページ。

　このノートが修学旅行の間に何ページまで使われるかを楽しみにしながら、手にしたペンを、鞄に仕舞った。]**